唐津の民話  

 
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 『かんねばなし11』  
“カラス売り”

 今日は、勘右衛(かんね)どんの、カラスば売らした話ば、しゅうだい
 かんねは、大石天満宮裏山に3畝(3アール)の畑を持っておりました。かんねはこの畑にエンドウを蒔きましたが、天満宮の森に棲みついているカラスが来て、蒔けばすぐその後で掘って食べてしまうので、少しも芽は出ませんでした。
現在の大石天満宮
 2度3度と蒔きますが、その都度カラスが来て食べてしまいますので、かんねは腹を立て、追っ払いますが「カアカア」鳴きわめき、そのあげくには「アホー、アホー」と、かんねを馬鹿にします。
 そこでかんねは、米屋町の古屋酒屋に行って酒の粕を買い、エンドウの種と一緒に畑に振り蒔きました。
 すると、カラスどもは酒粕を好みますので、喜んで食べて酔っ払ってしまいました。
 真っ黒いカラスが、酒を呑んで赤黒くなり、フラフラになって、右によろよろ、左によろよろとふらつき、しまいには動かぬようになってしまいました。この様子を見ていたかんねは、俵を持って畑に飛び出しました。
 カラスの方は「かんねが来た。それ逃げよう」としますが、酔っているので翼がうまく動かず、飛び上がることが出来ません。
「お前たちは、俺を馬鹿者のようにひやかすから、こういうことになるのだ。どうだ、俺が知恵者だということが分ったか」
 怒鳴りながら、倒れているカラスを捕まえては俵に入れていき、みるみるうちに俵一杯のカラスを捕まえました。

 家に帰ったかんねは、今度は八百屋町に行き、鴨を1羽買って来ました。そして、カラスの入っている俵と鴨1羽を天秤棒にかけ、町へふれ売りに出かけました。
現在の米屋町
「カラスはいらんか! カラスはいらんか!」
「安くしとくよ。カラス1羽5文」と言って町中をふれ歩きます。このさまを見た町の人達は
「かんねはおかしいぞ。鴨をカラスと言って売り歩いとる。5文なら安か。買わんこて」と思い
「ここに5文置く。1羽くれ」と、かんねに言いました。するとかんねは、5文の銭を受け取り、やおらカラスを俵から1羽取り出して客に渡します。
「俺が買うたつは、こんカラスじゃなか。天秤の先に吊るしてあるカラスの方だ」と、文句を言いました。するとかんねは
「こりゃ鴨ばい。カラスじゃなか」と言うより早く、さっさと荷を担いで、その町を通り抜けて行きました。後に残ったお客はカラスを下げたまま、ポカンとしていました。
 こうして、かんねは俵一杯のカラスを全部売り尽くしましたとさ。
             今日の話は、ここまで…。
               (富岡行昌 著 「かんねばなし」より)


2002.9.5  

 

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