唐津の民話  

 

 

 
 『かんねばなし33』  
“京見物”

 今日は、勘右衛(かんね)どんの、京見物の話ば、しゅうだい。
 勘右衛が住んでいる裏町には、伊勢講といって、講に当たると、毎年一人だけお伊勢さまに詣ることができました。
 去年は三軒隣の六助が当たって、伊勢詣りのついでに京都見物までして来ました。
 帰って勘右衛に
「よか見物じゃった。お伊勢さまも良かったばってん、京都じゃびっくりすることばっかりじゃった。京都の町には欲しかもんは何でんある。俺が清水寺に行く途中、町の中に『かかみみせ』という看板の掛けてある店ば見つけた。京都にゃ『かかあ』まで見せる商いがあるとにゃ俺も驚いたよ」
「それで、よか土産話になると思って、店に入って『かかあ』見せてくれと言ったら、店の者がおかしな顔をして、『何言いはるな?』と、言うたごたったばってん、京の言葉はようわからんし、そんまま帰ってきたよ」

 この話を聞いた勘右衛は
「俺も今度講に当たったら、京都で『かかあ』みせに寄ってこよう」
と思いました。すると、具合良く講に当たりました。
 それで、京都に行き六助の教えた店を探しました。
 しかし、いくら探しても店は見つかりません。
「こう探してん分からんなら、仕方なか。あきらめんこて」
と、立ち止まって、思案して、目の前の看板を見ますと、『ことしゃみせん』と書いてあるのに気付きました。
「ふふん、そんなら仕方なかばい」
と、独り言を言いながら、唐津に帰りました。

 帰って、勘右衛は六助に
「お前が教えてくれた『かかあ』みせば探したら『ことしゃみせん』と、看板ば出してあった。そいけん、今年ゃ『かかあ』は見せんとよ。俺も去年行っとけばよかった」
と話しました。
 六助は鏡の店を「かかあみせ」と間違って読み、勘右衛は勘右衛で、琴・三味線の看板を「ことしゃ、みせん」と、間違ったわけですたい。

         今日の話は、ここまで…。
           (富岡行昌 著 「かんねばなし」より)


2004.7.14

 

 

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