カナディアンロッキー

 

カルガリーの中心街

9月29日(水) 晴

カルガリー
   成田から約10時間かけて、ついにやって来ましたカルガリー。
「ここはカナダなんだよね」と、妻が言う。
 確かにここはカナダなのです。
 
 カルガリーは人口約100万人、ウインタースポーツの盛んな都市として知られ、1988年にはカナダで初めて冬季オリンピックが開催されました。
 あの銀メダリストの伊藤みどりさんは、ここでは5位でした。

カルガリー郊外の風景
 日本は真夜中のはずですが、こちらは朝です。休む間もなくバスに乗り込んでカナディアンロッキーに向かいました。車窓からスキーのジャンプ台が見えます。
 カナダは、ロシアに次いで世界第2位の面積を持つ国です。辺りには広大な台地が広がっていますが、家は意外に小さく、その敷地もそれほど広いとは感じませんでした。
 ちょうど日本の建売住宅団地のようで、比較的密集しています。家が大きいと暖房費が嵩むからなのかもしれません。

バンフ
 
バンフの町並み
カルガリーから120km、バスはカナディアンロッキー観光の中心地バンフの町に到着しました。
   バンフは、カナダのアルバータ州にあり、バンフ国立公園内の中心地で、人口8300人の小さな町ですが、年間400万人の観光客で賑わうカナディアンロッキーの一大観光拠点地です。
   また、アルバータ州は石油が産出されるため裕福な州で、州税がないのも魅力のひとつとなっています。
   国税のほかに7〜8%の州税がプラスされる他の州と違って、ここは国税5%のみです。
   日本人も多く住んでいて、大橋巨泉さんのOKショップもあります。
   昼食を済ませ、バスに乗り込んで「モレーンレイク」に向かいました。
   途中、車窓からはカスケード山・キャッスル山など、いろいろな形をした山々が連なって見えます。

モレーン・レイク
 
逆光線にも負けずに青いモレーン湖
 カナディアンロッキーには無数の湖がありますが、いずれも氷河が削って出来た氷河湖です。
   モレーン・レイクもそのひとつですが、モレーンとは氷河が押し流してきた土砂の意味で、その土砂で谷がせき止められて出来た湖がモレーンレイクです。
   ところが、この土砂の間から水が漏れて、冬場は周囲の山や川の水が凍って湖に流れ込む水がなくなるため、ただの小さな水溜りになるそうです。モレーン湖は実は漏れーる湖なのです
 初夏になって、雪解け水が流れ込むようになると、またもとの綺麗な湖に戻るそうです。面白い湖ですね。
 モレーン・レイクはとても美しい湖です。
 
険しい山々に囲まれたモレーン湖、冬はただの水溜りとは…
   背景には荒々しい姿の山々(テンピークス)があって、光線の加減によって時々刻々水面の色が変り、綺麗さを通り越して神秘的でさえあるそうです。
 私たちが行ったときは、午後の逆光線の時間帯でしたので、写真は撮りづらかったのですが、陽のあたる場所とあたらない場所では色が違って、本当に綺麗な湖でした。。
 現地ガイドが言っていましたが、「皆さんは本当にラッキーです。昨日は何と大雨だったのですよ。ロッキーの天気は変り易く、今日は嘘のように晴れ渡りましたがね」。
光線の角度によって湖の色が違うモレーン湖

 なるほど、ものすごい雨だったらしく、所々で土砂崩れや大きな水溜りが出来ていました。
 それでも川は濁っていましたが、湖は少しも濁らず、青々と輝いていました。

 余談ですが、私たちは運が強いのでしょうか、同じような言葉を何度も聴きました。
 15、6年前になりますが、冬の新穂高山に行った時も雲ひとつない快晴でしたが、「昨日は吹雪だったんですよ」と、いうことでしたし、
モレーン湖の展望台から振り返ればこんな風景
 スイスのユングフラウヨッホに行った時も、晴れ渡ってアルプスの山々や氷河がはっきり見えて、「こんな日は滅多にないよ」ということでした。
 また、3日に2日は雨が降ると言われる、ニュージーランドのミルフォードサウンドでも快晴でしたが、前日は嵐だったそうです。

 私たちは次の目的地、ナチュラルブリッジに向かいました。
 高速道路から時々見え隠れするボウ川は、昨日の大雨で灰色に濁った水が濁流となって流れています。
前日の大雨で灰色の濁流が流れるボウ川
 川の濁り以外は、空はあくまでも青く、冬支度の常緑樹林は濃緑でくっきり藍く、頂上に雪や氷河を頂く山々はため息が出るほど綺麗でした。
 バンフ国立公園には年間400万人の観光客があるそうですが、自然保護が徹底していて、動植物を殺すことはもちろん、枯葉の一枚でも拾って持ち帰れば罰せられるそうです。
 それだけに生息する動物も多く、動物保護のために道路沿いには延々と金網の柵が設けられています。
 また、この辺りは標高2000mぐらいの高地ですから、あと2週間もすれば雪のため道路が閉鎖されるそうで、今のうちにと各所で道路工事がなされていました。

ナチュラル・ブリッジ
岩が橋のようになっていている、ナチュラルブリッジ
 キッキング・ホース川の急流が川底の岩を削り続けて造り上げた天然の岩のアーチ橋です。
 小さな橋で人がまたげそうな感じですが、下は昨日の大雨で増した水が渦巻き、濁流となって流れています。
 よく見ると、アーチは完全につながっているのではなく、わずかに切れています。
 普段はこの川の水は、少し緑がかった乳白色をしているそうですが、今日は大雨の影響で、溢れんばかりの水は灰色、でも、それもまた良しとしましょう。

エメラルド・レイク
湖面が美しい、エメラルド湖
 エメラルド・レイクは、文字通りエメラルドグリーンのとても美しい湖です。
 他の湖と同じように氷河の堆積物が流れ込んで出来た湖ですが、氷河が削り取った岩粉が溶け込んで、太陽光に反射してこのような美しい色になるそうです。
 湖の中には島があり、そこには宿泊できるロッジもあります。
 周りは、エメラルド・ピーク、ワプタ・マウンテン、マウント・フィールド、マウント・バージェスといった、雪を頂いた2600〜2800m級の山々が湖を取り囲んでいます。
 その雄大さ・美しさは「さすがロッキー」の一言です。

エメラルドグリーンの湖面に映える山々
 今日の観光はこれで終り。今夜の宿泊地バンフに戻りました。
 バンフはサルファー・マウンテンの山すそに広がるショップとレストランが並ぶ華やかな街です。
 私たちの泊まる、バンフ・スプリングスホテルは、街から少し離れたところにありました。
 広いホテルの敷地内には、いくつかの建物があります。
 そのひとつの建物の中には色々なお店がありますが、24時間営業のコンビニに立ち寄って水やジュースを買いました。
 店に入ると若い黒人女性が「こんにちは」と声をかけてくれます。
バンフ・スプリングスホテル前の夜景
 別に日本語を話せるわけではなさそうですが、日本人の多い観光の町ですから「こんにちは」「ありがとう」「さようなら」は話せるのでしょう。
 こっちだって英語が話せるわけでもありません。彼女が指差すレジに示された金額を支払い、つり銭を確認していると、人懐っこい笑顔で「ありがと」と言いましたので「サンキュー。バイバイ。またネ」と言って出てきました。
 夜の街を散策したい気分でしたが、明日が早いので、部屋に帰って明日の準備を済ませ、シャワーを浴びたら11時をまわっていました。
 

9月30日(木) 晴

レイク・ルイーズ
朝もやが作り出した幻想的な風景
 いよいよ今日はカナディアンロッキー観光のハイライト、コロンビア大氷原観光の日です。
 朝から雲ひとつない絶好の観光日和。バンフ・スプリングスホテルには連泊しますので、荷物はそのままホテルに残してバスに乗り込みました。
 最近はどこでもそうですが、観光地のガイドは現地のガイドを使わなければならなくなっています。現地ガイドといっても日本人ですが。
 今日はその現地ガイドのほかに、カメラマンが乗り込みました。名を「あゆみ」ちゃんと言って、まだ若い独身女性です。独身と言うのは必ず聞かれるので、その前にと「私独身です。出身は熊本です」と名乗りました。
後方の氷河から水が流れ込むレイク・ルイーズ
 さて、このカメラマン、今日一日私たちと同行して写真を撮り、DVDに納めて希望者に買ってもらうという会社から来た社員でした。
 金額は180カナダドル(16,000円)と、かなり高額ですが、私達は行かないカナダの大自然や、ナイアガラまで入っていると言うので買うことにしました。
 左右に、雪を頂いた山々が見えますが、いずれも上の方は丸裸で、岩肌がむき出しになった山ばかりです。標高2,400m位が限界で、それより高い山には寒くて草一本生えないのだそうです。
 
濃い藍色の湖面に映える美しい氷河
 やがてバスはレイク・ルイーズに着きました。駐車場から湖までの歩く道々、あゆみちゃんにDVDを買うと伝えたら、それではと、早速カメラを向けてくれました。
 「福岡から来た」と言うと、九州人としての親近感を覚えるのか「えっ、福岡ですか。お隣ですね。福岡はどこですか?」「大濠公園の近くに住んでいるよ」「またいい所にいるんですね。私も福岡の専門学校を出たんですよ」
 なんて、歩きながら話しているうちに、目の前にパッと湖が開けてきました。
 レイク・ルイーズはバンフ国立公園内にある「ロッキーの宝石」と讃えられる美しい湖です。
レイク・ルイーズの陽の当たる湖面はこんな色
 そして、このロッキー観光のハイライトでもあります。
 イギリスのビクトリア女王の娘、ルイーズ王女からその名がつけられた湖で、長さ2.4km幅は広い所で0.5kmの細長い形をしています。
 不思議な色をした湖は神秘的でもあり、その水源は正面に見えるビクトリア氷河から流れ込むのだそうです。
 神秘的なブルーの湖面、それに白い氷河を頂いた山、これらが作り出す一大パノラマは、なんともいえない美しさでした。

ペイト・レイク
湖面も空もあくまでも青いペイト湖
 私たちを乗せたバスは、次の目的地ペイト・レイクに向かいました。
 途中、ボウ・レイクの横を通過しましたが、帰りに寄るので、車窓から眺めるだけで通過しました。
 ペイト・レイクは盆地型の湖で、山からの岩粉が溶け込み、太陽光に屈折して綺麗な色をした湖でした。
 この辺りは標高が2,100mもあり、雪と氷に道は閉ざされるので、あと1週間もすれば閉鎖されるそうです。私達はここでもいい時に来たことを実感しました。
今年は遅れている黄葉が見ごろ
 昨日から私たちは、色々な湖を見てきました。 どれも氷河が削った「氷河湖」で、似たような色をしています。が、よく見ると水の色もそれぞれに少しづつ違っていますし、太陽光の屈折具合や、湖面に映る周囲の山々によって、それぞれ違った表情をしていることがわかりました。

 ここから私たちは、コロンビア大氷原に向かいました。
 途中、道路の両側に今が見ごろの黄葉が見事な彩りを添えてくれました。
 
正面の山の向こうがコロンビア大氷原
 樹種はポプラだそうですが、日本で見るポプラとは少し葉っぱの形が違っています。
   別に街路樹として植え込んだものではありませんので、自然に生えた木々だと思いますが、「黄葉街道」と名づけてもいいような見事さでした。
 バスを降りて写真に収めたい心境でしたが、高速道路なので車を止めるわけには行かないそうです。やむなく写真は車窓から。
 実は、このツアーでこの時期を選んだのは、カナディアンロッキーの黄葉と、ナイアガラの紅葉と両方を狙ったものでした。
 ロッキーの黄葉は少し遅いかな?と思っていましたが、今年は色づきが遅れているそうで、今が見ごろ。ここでもラッキーでした。

コロンビア大氷原
アイスフィールドセンターから眺めたアサバスカ氷河
 コロンビア大氷原はジャスパー国立公園にあります。ここでは氷河の上を歩くことになっています。
 大氷原は、これから私たちが行く氷河の向こう側に広がっているそうで、その広大な氷原の大部分は見ることはできず、私たちは、大氷原の一部の「アサバスカ氷河」の上を歩くのだそうです。
 ところで、氷原と氷河の違いですが、カナダは過去4回の氷河時代を経ています。コロンビア大氷原とアサバスカ氷河は、かって大地を削り、ロッキー山脈を造り上げた巨大な氷床の一部だったそうです。
 高い峰や高原に降った雪が、年々蓄積されていくと、氷原が形成されます。
氷の上に立つと山からさす陽光がまぶしい
 この雪が30mほどの厚さになると、下部の雪は圧縮されて氷となり、更に上部の積雪が増えて氷が厚くなると、ついには氷が谷からあふれ出して、氷が流れ始めます。これが氷河です。
 したがって、氷原はそのまま動きませんが、氷河は常に少しづつ谷間を流れています。アサバスカ氷河の先端部分の流速は年間15mだそうです。
 最後の氷河時代が終ったのは、わずか1万年前で、それ以降、世界の殆んどの氷河は温暖化の影響もあって、蓄積される氷の量よりも、解けて流れる量のほうが多いため、年々後退を続けています。
あの先が大氷原。でもクレバスが多くて行けない
 アイスフィールドセンターで昼食を済ませ、シャトルバスに乗って、雪上車のいる所までやってきました。
 巨大なタイヤの雪上車は、ゆっくりと坂道を氷河に向かって降りて行きます。車が転げ落ちるのではないかと心配になるような坂道です。
 やがて車は、平坦な氷の原っぱの上に私たちを降ろしてくれました。ここがアサバスカ氷河の上です。大氷原が広がるのは、奥の尾根の向こう側だそうですが、残念ながらそこまでは行けません。
 氷河の始まっている尾根まで、ちょっと足を運べば届きそうな距離です。「あ〜ァ、あそこまで行きたいなァ」でも、それは絶対駄目なんです。
雪上車を降りてアサバスカ氷河の上を歩く
   アサバスカ氷河は、渓谷流出型氷河で、長さ6km、幅平均1km、氷の厚さは90〜300m、標高は約2200m。
 氷河の上流ほど氷が割れやすく、クレバスがあって危険なので、平らにならされた氷の上以外には行かないように注意されています。
 氷の上は滑るのかと思ったら、サクサクッとした感じで、滑るような所はありませんでした。滑らないように、人の手が加えられていたのかも知れません。
 異様な雪上車の写真を撮ろうとカメラを構えたら、運転手があわてて車から離れようとしましたので、
雪上車と運転手
「NO、NO、そのまま、そのまま」とジェスチュア混じりで言うと、にっこり笑ってポーズをとってくれました。
 今日の気温は17℃。真夏と同じ気温だとか、非常に暖かいラッキーな1日だそうで、1週間前は吹雪だったそうです。
 うん?1週間前?。1週間前と言えば、私がツアー申し込み日を変更した日ではないか。
 実は、9月22日出発に申し込んでいたのですが、「あっ、彼岸だ!」。彼岸には唐津の家に帰らなければならない、と言うことで、29日出発に変更しました。私達の幸運は、ここでも発揮されていたのでした。

ボウ・レイク
湖面に背景の山々を映したボウ湖
   帰りに、朝方車窓から眺めたボウ・レイクに立ち寄りました。今日最後の観光地です。
 クロウフット氷河の雪解け水が、堆積物によってせき止められた氷河湖で、昨日濁流となって流れていたボウ川の水源になっています。
 標高は1,950m、ツアー客が必ず訪れる観光スポットになっているそうです。
 もちろんここもすばらしい湖で、駐車場までの散策路を歩きながら、すばらしい眺めをカメラに収めました。
 カメラマンのあゆみちゃんが、最後に一組ずつ全員に、一日の感想を聴いていました。
ボウ湖もまた湖面の色がすばらしく美しい湖だった
 バスは再び居眠り客を乗せて、バンフの町に帰ってきました。あゆみちゃんはここまで。今から帰って徹夜でDVDを仕上げ、明日の朝出発までには届けてくれるそうです。
 私たちは、大橋巨泉さんのOKショップに立ち寄って、みやげを買い、余った時間で付近を散策しましたが、小さな町で特別なものは見当たりませんでした。
 近くのレストランで夕食を済ませ、ホテルに帰って明日の準備をしました。夜はオプショナルの「カナディアンロッキー星空鑑賞と夜景ツアー」が待っているからです。
夜明けのバンフ・スプリングスホテル
   夜10時から12時までのこのツアー、しっかり着込んで来ましたが、さすがに夜はかなり冷え込みます。
 明朝も立ち寄る、マウントノーケイという展望所で、バンフの夜景を眺め、もう一箇所別の角度から眺めて、星空鑑賞の場所に向かいました。
 草っ原にシートを敷いて、そこに寝転がって星空を眺めます。標高の高い所ですから、空気も澄んでいて、さすがに星空がはっきり見渡せます。
 天の川がはっきり見え、北斗七星も直ぐにわかりました。そこから北極星を見つけ出し、ガイドが星座を次々に指していきますが、それは良く判りませんでした。
   

 

2010.10.27  

  

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