唐津の民話
「かんねばなし7」
今日は、勘右衛(かんね)どんが、キツネをだました話ばしゅうだい 「こりゃ、キツネ、お前は上手に化けていると思っておろうが、お前の尻尾が出ているぞ。そのくらいじゃ俺にはかなわんなぁ」と、キツネをからかいました。キツネは、化けの皮がはがされたかと思うと気が小さくなって 「しまった!かなわん人に会うてしもうた」と思うと神通力はなくなり、もとのキツネになってしまいました。 「俺は裏町のかんねという者じゃ。唐津では少しは知られた化け方の先生だよ。いい時に会うた。俺が化け方を教えてやろうか」と、キツネに言いました。すると、すっかり度肝を抜かれているキツネは 「この人はよほど化け方のうまい人らしい。化け方を習おうかな」と思い 「それなら教えてくだされ」と、ピョコンと頭を下げました。その可愛らしいこと。かんねは機嫌よく 「よか、お前がそう頼むのなら教えてやろう。その前に、お前がどのくらい化けるか、お前の化け方の力を見てみたい。俺の言う通りに化けてみんか」 「初めに、そこの夏みかんの木に登って、みかんに化けて見せてくれ」と言いました。キツネはかんねの言いつけ通り、みかんの木に登り、口にみかんの葉をくわえ、尻尾で顔を二、三度なでて、みるみるうちに夏みかんに化けました。するとかんねは 「まあ、大体よかごたる」と言って、庄屋さまへの土産として持っていた赤身鯨の袋の口を開け、化けみかんの下に置きました。 すると、キツネの大好物の鯨の匂いが木の上にたちこめますので、食いたくてたまりません。キツネは思わず、みかんの木から手を離してしまいましたから、その化けみかんは、トッポリと袋の中に落ち込んでしまいました。 するとかんねは、その袋の口を紐でしっかりと結びました。キツネは袋の中で暴れましたがどうしようもありませんでした。 今日の話は、ここまで…。 (富岡行昌 著 「かんねばなし」より)
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