唐津の民話  

 

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「かんねばなし2」  
「ウソの皮」

 今日は、勘右衛門(かんね)どんが、「ウソ」の皮ば、売らした話ばしゅうだい
現在の木綿町(別名親不孝通り)
 かんねは腹が痛くなったので、木綿町(きわたまち)の大黒屋という薬屋に腹痛止めの薬を買いに行きました。ところが、かんねは掛け買いが多い上に、その代金もあまり払いませんので、その時は薬を売って貰えませんでした。
 「よし、この意地悪な薬屋にゃ、いつかひどか目に合わせてやるぞ!」と、思いましたが、その時は黙って帰りました。
 昔の薬屋は店売りだけでなく、町の中をふれ歩いて売ることもありました。大黒屋の一番評判の薬は目薬でしたので、大黒屋はその目薬をふれ売りで売っておりました。
 「大黒屋の目薬ッ、ただれ目・のぼせ目・何の目にもよく効く目薬、大黒屋の目薬ッ」と言って売っておりました。

 かんねが薬を売って貰えなかった日から二・三日経ったある日、大黒屋のふれ売りが魚屋町を通っておりました。その時かんねは、何かの考えがあったのでしょう、天秤棒で荷を担いで、そのふれ売りの後をつけておりました。
 「大黒屋の目薬ッ、ただれ目・のぼせ目・何の目にもよく効く目薬、大黒屋の目薬ッ」とふれますと、すぐその後でかんねは
カワウソ(獺)
 「ウソん皮、ウソん皮、ウソん皮ッ」と大声でふれます。いつもなら大黒屋がふれ歩くと、お客が出て来て、きっと目薬を買うのに、この日は誰も買ってはくれません。
 「どうも声が小さいようだ」と、今度は大声を出して
 「大黒屋の目薬ッ!、ただれ目・のぼせ目・何の目にもよく効く目薬、大黒屋の目薬〜ッ!」と叫びます。すると、またそれに続けてかんねが
 「ウソん皮、ウソん皮、ウソん皮〜ッ!」と、薬屋の声よりも大きな声でふれ歩きます。それで、町の人は誰一人薬を買う人はありませんでした。立腹した薬屋は
 「かんね、お前が俺の後から、嘘ん皮、嘘ん皮、とふれるから、俺の薬は効かんと思って買ってくれる者はおらん、その売りもしない物をふれ歩くのはやめてくれんか」と、文句を言いました。するとかんねは
 「このとおり、間違いなくウソん皮ば売り歩いとる。嘘をついとるんじゃなか。お前から叱られる訳はないはずじゃ。また、後をつけるなと言われても、ここは天下の大道じゃ、誰が歩いても文句はあるまい」と反対に薬屋をやり込めます。それで、困ってしまった薬屋は
 「そんなら、お前のウソの皮ば買おう。いくらで売るや?」と相談しかけました。
現在の魚屋町
 「1枚1両。5枚持っとるけん、しめて5両」、かんねは普通値の2倍も高く言いました。薬屋は高値だと思いましたが、意地悪されるよりはましだと思って、そのウソの皮を全部買い取りました。
 それ以来、大黒屋はかんねが薬を買いに来た時は、意地悪せんようになりました。
 今日の話は、ここまで…。
 (富岡行昌 著 「かんねばなし」より)


2001.12.18  

 

 

  

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