唐津の民話  
 

 

 
 『かんねばなし48』  
“狸の小判”

今日は、勘右衛(かんね)どんの、狸から小判ば貰わしたの話ば、しゅうだい。

 昔、唐津の近くの村には狐や狸が棲んでいて、人間にいたずらをしておりました。
現在の大石神社
 けれども、勘右衛は知恵者でしたから、反対に狐や狸の方がいじめられていました。
 ですから、一度ぐらいは勘右衛に勝ちたいものだと思っておりました。

 ある日、大石天満宮の裏山の狸が、勘右衛の家の縁の下にひそんで、中の様子を伺っていました。
 勘右衛は誰かと話をしています。
「どやん強か人でん、一つぐらいは恐かもんのある。勘右衛どんの一番恐かもんは何け?」
「やっぱり、誰でん恐かもんはあるばい。お化けも恐ろしかばってん、一番恐かつは銭たい。銭が多過ぎたら、ろくなこつはなか。小判も一ぺんぐらいは持ってみたかばってん、後ん恐かけん持ちきらんとたい」
 これを聞いた狸は
「こりゃ よかこつば聞いた。勘右衛は芝居のお化けば見ただけで、気の遠うなるそうじゃ。それより恐か小判ば見せたら、死んでしまうじゃろう。木の葉の小判じゃミソウスか。本物の小判ば勘右衛に投げつけよう」
と考えました。
 その晩の明け方のことです。勘右衛がうつらうつら眠っていると、縁側のあたりでチャリン、ジャラジャラと音がしました。
 目を覚ました勘右衛は、誰かがいたずらをしていると思って
「誰か!!」
と、怒鳴りました。狸はその声を勘右衛の悲鳴と早合点し
「しめた!やっぱり勘右衛が恐ろしがって気が違うたばい」
にんまり笑って、山に帰りました。

現在の唐津市材木町
 勘右衛が起きてみますと、破れ戸の隙間から投げ込んだのか、縁側に小判が5,6枚落ちていました。
「こりゃ 狐か狸のいたずらで、木の葉の小判じゃろう」
勘右衛が手に取って見ますと、小判は重たいのです。その小判を噛んでみました。歯ごたえがあり、小判は本物と分かりました。
 2,3日経ってから町の人の噂では、材木町の木屋さまの家の小判がなくなっていたそうです。
 もしかしたら狸が盗んできて、勘右衛の家に投げ込んだものかも分かりません。けれども勘右衛は知らん顔をしていました。   

         今日ん話しゃ、こいまで…。
           (富岡行昌 著 「かんねばなし」より)


2005.12.17

 

 

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