北朝鮮の脅し外交にまたも右往左往する日本

核の脅威を煽るアメリカ
 北朝鮮が核実験に成功したと発表しました。これに対して中国や韓国が大きく反応して、核実験断固反対を表明し、アメリカまでが大いに騒いで見せるたりするものですから、日本は「それ制裁だ〜!!」の大合唱となりました。
 アメリカ高官の言動は、ことさら強硬論を唱え、何だか騒ぎを煽りたてているようにさえ見えませんか?
 確かに、この核実験が本当に成功したのであれば、世界の核に対する状況認識や対応は大いに混乱し、核拡散防止論議などは吹っ飛んでしまう危険性があります。
 ただ、日本はもう少し冷静に判断し対応しなければ、北朝鮮の思う壺にはまってしまうのではないでしょうか。
 中国や韓国は騒いでは見せても、過度な制裁には消極的ですし、武力行使を伴う制裁には、ロシアも加わって反対を表明しています。アメリカだって口では強いことを言っても、武力行使なんてさらさら考えていないでしょう。
 「制裁だ!制裁だ!」と騒いでも、各国の思惑はまちまちで、足並みなんか揃うはずもありませんが、世界各国が足並み揃えて行う制裁でなければ意味がありません。
 拉致の問題を抱える日本が、いきり立つのは分かりますが、だからこそ冷静に対応しなければ、拉致された人たちの命の保障はなくなります。世界の他の国々よりも突出した言動や制裁論でリードすることは危険ではないでしょうか。何しろ相手はならず者国家なのですから。

6カ国協議ではまとまらない
 第一、今回の核実験は本当に成功したのかどうかがはっきりしません。失敗説や偽爆弾説さえあります。「アメリカや日本が制裁を強化するなら次は水爆だ」とも言っています。まさに脅迫外交そのものですが、いささか駄々っ子じみてはいませんか。
 北朝鮮は捨て身の脅し外交に出ているようです。この場合の解決策はアメリカしだいでしょう。アメリカが2国間協議に応じれば解決できます。6カ国協議ではだめです。
 でも、アメリカは2国間協議には応じません。あくまでも6カ国協議を主張しています。それはなぜでしょうか?
 北朝鮮はアメリカが2国間協議に応ずれば、ミサイル問題も核開発も、凍結してもいいと言っているようです。そうなれば北の脅威は一気に解決します。
 でも実は、アメリカはこの解決は望んでいないのではないでしょうか。北朝鮮が日本や韓国に脅威を与え続けることがアメリカにとっては国益になるのですから。
 北朝鮮が怖いのはアメリカだけです。そのアメリカが北朝鮮に対して武力行使はしないと言っているのですから、北朝鮮は大いに強気に出て、2国間協議を迫っています。
 アメリカとしては、世界中が注目する中で2国間協議に応ずれば、ミサイルや核の問題を解決せざるを得ません。それでは困るのです。まとまるはずがないことを百も承知の上で、あくまでも6カ国協議を主張しているのだろうと思います。

アメリカにとっての懸念は中国
 今回の核実験報道で、日本は早速ミサイル防衛の充実強化を前倒しで図ることにしました。極東米軍の強化再編成にも金を出すはずです。日本はアメリカによって護られることになっているのですから。北の脅威はアメリカにとって金づるであり、まさに打ち出の小槌なのです。
 今のところ、テポドンもノドンもアメリカ本土までは届かないといわれています。北朝鮮が日本や韓国を脅し続ける限り、アメリカは他人のふんどしで相撲がとれます。
 アメリカにとっての懸念は中国です。世界の民主化をもくろむアメリカにとって、いかにも目障りなのは中国で、極東軍備を強化して中国包囲網を敷こうとしています。これには金が必要です。
 日本や韓国・台湾の軍備を強化させ、米軍基地を強化再編成するための資金は、日本や韓国から出させなければなりません。
 北の脅威が解決すれば、金づるを失い、ミサイル防衛構想や基地の強化も、米軍再編成も大きく後退します。だからアメリカは北朝鮮との2国間協議には応じず、北の脅威解決には本気にはならないのです。
 北朝鮮は生かさず殺さず、適当に泳がせておく……これがアメリカの基本方針なのではないでしょうか。
 アメリカさえその気になれば、北朝鮮の核問題なんかすぐにでこ解決します。
 そんなアメリカを刺激する効果はあるかもしれませんが、自民党の幹部から出てきた“日本の核武装論”などは、本気で言ったとすれば、日本の進路を危うくするものでしょう。

2006・10・16
 

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