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「単身赴任システム」は日本人のDNAとなりえたか? (T)
1−1.秀吉の朝鮮出兵
今年(平成13年)4月、久しぶりに名護屋城址で花見となった。高校時代の後輩も含めた友人6名(内女性3名)新聞部の仲間。実際40年振りという女性もいたのに、彼女は「メル友」で、や−こんにちは。桜こそ多くはないものの、堂々たる石垣に散る花は真に歴史の風情を感じさせます。
春霞の中、加部島はじめ点在する島々は襖絵のようななぎ海のなかでした。400年まえ、秀吉は晴れた日には対馬まで見えたであろう天守閣から朝鮮征伐(懐かしい響き、若い人には差別語か)の大号令を掛けた。事の善悪は別としてなんと気宇壮大なことか。将兵も朝鮮を抜いて「明国」まで征服しようとの出兵、これもまたなんと意気盛んなことでしょう。動員された大名陣地は90ヶ所以上、狭い名護屋、呼子の山地によくも集結したものです。
話しは現実的・現代風に変わります。以下のQ& Aは、無差別にクエッションらしい、またアンサ−らしいという会話らしい会話調です。(ようするに無責任、以下同じ)
Q:秀吉は淀君も連れてきていたんでしたか。
A:一時期はきていたでしょう。
Q:家康などもやはり側室同伴かな。
A:出兵だから他の大名はほとんどいなかったんではないかな。
A:ほとんど単身赴任だね。もっとも軍隊に単身赴任はないでしょうけれども。
Q:「単身赴任」といえば江戸時代は参勤交代で単身赴任が多かったろう。
A:対馬からも参勤交代が江戸へいっている。
A:江戸は単身赴任者でいっぱいだった訳だ。花の吉原など単身赴任の文化だね。
Q:先輩、江戸時代となると強いですね。
A:池波正太郎と司馬遼太郎はまかせなさい。
Q:今と昔の単身赴任は大違いだね。昔の単身赴任は側室つきだ。
A:まあ、今の発言は実感実感。白状しなさい。
A:いやいや、私は潔白です。
1−2.近代日本の2度の大革命
明治維新のスロ−ガンは「文明開化」。チョンマゲを切り落とし、ザンバラ髪。武士階級が消滅し、たいへん分かりやすい。この変革の痛みとして、西郷隆盛の西南の役が発生。幕末を演出した薩摩の精鋭1万5千人が消滅した。
昭和20年の敗戦は、終戦に至るまで300万人のいのちが失われ、軍隊が解体。改革の痛みどころの話しではない。スロ−ガンは「民主主義」。抑圧から開放されて自由と平等が保証された。これも分かりやすい。
明治維新と昭和20年の敗戦は「革命」であり、構造的な大変革である。この大変革は国民一人々の目の前に分かりやすく、かつこれからがんばらねばならない、という合意が形成された。
現代に至るこの400年の間に社会は根本的に変化している。 しかし「単身赴任を容認する社会」はこの400年間、大革命を2度経験しながら、当然視され継続してきた。
そして今現在、我が国中で変革が叫ばれている。この変革とはなんだろう。その場合、単身赴任システムは継続するだろうか。
すなわち、この単身赴任は、我が国民のDNAとなっているのだろうか。
1−3.単身赴任は日本独特のシステム
友人に40代の(アルジェリア系)フランス人がいる。かれは日本女性と結婚し、スポ−ツマンで通信技術に強い。輸出入の小さな会社を経営し仕事も順調です。この彼に質問してみた。
「フランスも官僚が強い国だと聞いていますが、単身赴任が有りますか」彼は言下に否定した。
「それは有りません。民間会社でも難しい。強制すれば職場を辞めるでしょう。もちろん転勤は有ります。その場合はよく話し合わないとむりです。」アメリカはフランスほどではないがやはり「辞令1本」という訳にはいかない。
このように「総合職」と呼んだりしている単身赴任システムは日本人社会の特徴である。この特徴は日本人のDNAとなっているのか。
1−4.参勤交代システムのマトリックス表
単身赴任が日本社会システムの特徴となった背景とは何だろう。はっきりしている事は参勤交代の制度である。徳川家光が「武家諸法度」に正式に決定して以来、これが江戸社会の骨格となった。
この参勤交代の社会システムを仔細に検討してみると現代社会の骨格が形成されている事がよく分かる。これをマトリックスにしてみると以下の表ができる。
(表1)参勤交代システムのマトリックス表
社会インフラ
| 大名本拠地
| 道 中
| 江 戸 |
行政・司法 通信・交通
| 城代家老 合議制 飛脚制度
| 本陣 大名行列 街道の発達 五街道 飛脚便
| 江戸屋敷 長屋 |
経 済
| 各藩独立
| 宿泊・荷役費 通貨制度
| 江戸屋敷経費 滞在費 |
軍事 外交
| 江戸幕府の統制 各藩独立行政 隠密
| 宿場役人 通行証(ビザ)
| 江戸留守居役(外務大臣) 将軍家対策 他国情報交換 |
社 会
| 藩主と一身同体 終身雇用 留守家族の安全
| 安全・信頼 貨幣経済 往来切手
| 家督相続 単身赴任 貨幣経済 |
1−5.社会を見る視点・切り口
上記の表は、ナントナントその社会構造が現在社会とほとんど同じである事を示している。表中強調文字は現在に続いているシステムである。
そして、単身赴任システムは「終身雇用制」「安全・信頼を基本とする社会」とセットになっている社会である。
我が国社会は、江戸時代から400年 この基本構造のままに現在の国際化・情報化社会に突入している。現在社会の「歪み」はこの基本構造が国際化・情報化社会の中で音を立ててきしんでいる状態なのです。そしてこの「軋み」は日本人のDNAのきしみともなり社会面の「母親の我が子殺し」等、実に理解不可能なことに及んでいる。
このレポ−トは、この社会構造を理解する事により、現在社会を見る「視点・切り口」を提供するものです。これによって終戦までの戦争の社会、そして現在社会の問題点を各人が「自分流に」切り口をもてる事を期待しています。この視点から見れば小泉内閣の「改革」は単なる景気対策に過ぎない事が分かるでしょう。
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