ボケがうつる

 今日の新聞にきわめて興味深い記事が掲載されていました。題して『ボケ連鎖』
 ボケがうつる!? ウッソーと言いたいところですが、一理もニ理あるようですので、紹介してみました。  ボケ老人を抱えた家では、介護だけでも大変なものですが、その上に「ボケがうつる」とは。あ〜ァ・・・・・・。
 筆者は 築山 節(つきやま・たかし)河野臨床医学研究所第三北品川病院院長。

 「ボケ連鎖」とは「ボケがうつる」ことです。皆さんは信じられないことかもしれませんが、ボケた人のそばにいた、病気のない普通の人に「ボケがうつる」ということがあります。しかし、何かの細菌によってうつるのではありません。なぜそのようなことが起こるのか、臨床の現場からお伝えしたいと思います。

 最近は平均寿命が伸び、元気なお年寄が私たちの周りにも増えてきました。これに比例して、ボケたお年寄りの数も増えてきています。
 この結果、ボケたお年寄たちに関係する人も増えています。自分のことだけでなく、こうした家族の面倒を一生懸命にみるのは本当に大変なことで、いつも頭が下がる思いで見ています。
 「少しはご自分のことをしたらどうですか」と、時々声を掛けてみますが、「代わりをする人がいない」「子どもの自分がしないといけないと思う」などと深刻な言葉が返ってきます。
 介護をする方たちのこうしたまじめな気持は理解できますが、この気持が一方で、彼らを不幸なボケ連鎖の世界に追いやってしまうのです。

 脳というのはもともと新しいことに対処し、そのために多くのエネルギーが使われるように出来ています。それなのに慣れた変化のない事柄ばかりしていると、次第にその働きが低下していきます。ボケた人の世話も、そうした「慣れた変化のない」事柄に当ります。
 こう言うと、「介護は大変なことだ」と関係者の皆さんは声をそろえて言います。ですが、確かに精神的には大変なことではあっても、している仕事を少し冷静に検討してみてください。同じことを繰り返している生活に気が付くのではないでしょうか。
 ボケ連鎖は、ボケた人と同じ生活を長く続けることによって起こります。身体に障害があり、速く歩けない人と歩く場合、人は誰でも遅い障害者に速度や歩幅を合わせて歩くでしょう。ボケた人を介護している生活では、日常生活全般で“歩幅”を合わせてしまっていることがあります。こうして脳の働きも同じようにしか働かせなくなり、介護者まで記憶障害などのボケ症状を呈すようになるのがボケ連鎖なのです。

 こういう原因によって連鎖が引き起こされるのですから、防ぐことは可能です。介護をしなければならない生活であっても、社会福祉のヘルパー派遣制度などを利用して時間をつくり、友人たちと付き合ったりする変化のある生活をして、脳を活発に活動させることが出来ます。
 基本的に健康とは、肉体的なことや精神的なことだけでなく、「社会の中で活動できる」ことでもあります。個人や家庭の中に閉じこもるのではなく、社会性を持ち続けてこそ、はじめて本当の健康生活と言えるのです。

 
2002.08.23  

 

 

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